Elegance Lore

エレガンスの伝承

エレガンスの神髄は
高度に洗練された自然体
日々の暮らしは
自らを芸術品へと磨き上げる 道程

The essence of an elegance is a Japanese-Zen mind.
Everyday life is a journey to polish oneself with a work of art.

Maria Kozuki

Maria Kozuki
©Kuninobu Akutsu

上月マリアの言葉と語りをお届けいたします

言葉・語り Maria Kozuki
音楽 「Blessed Life 〜生命礼讃」
作曲 Maria Kozuki 編曲 Yu Takao

淑女の精神

美しさについて

神様のお姿

先が見えない時には

誰もが持つ至宝

祈り 〜for True Peace〜

淑女の生き方

2019.04.30 平成天皇と美智子様の長い道のり

今日は天皇皇后両陛下というご夫婦、また、ご家庭という観点から、平成を振り返ってみたいと思います。

今上陛下は、昭和59年4月6日、ご結婚25周年を機に行われた記者会見の中での「家庭づくりの基本的な考えと、これまで苦労されてきたことをおきかせください」という質問に対して、このように答えておられます。

「孟子の中に『国の基は家にあり』という言葉がありますけれども、家族という身近な者の気持ちを十分理解することによって初めて、遠いところにある国民の気持ちを実感して、理解できるのではないかと思っております。子どもたちに対しても家庭を大切にするように教えてきたつもりです」

同じ質問に対して、美智子様は「基本的な考えというようなしっかりとしたものはあまりございませんでした」とお答えになり、「ただ、私自身おそばに上がらせて頂いた時からずっと東宮様(現天皇陛下)にすべて受け入れて頂いて、安らいだ気持ちの中で導かれ、育てて頂いたという気持ちが強いものでございますから、そうした幸せな経験を今度は子供たちの上に活かしていきたいとずっと願って参りました。その人が一時それにふさわしくなくても、受け入れるところが家庭なのではないかと今はそう思っています」とお話になられました。

美智子様は折に触れ、陛下への深い敬慕の念と感謝の想いをお話し遊ばされます。そして、陛下もそれを深く受け止めていらっしゃいましたことは、国民の多くが知るところでございましょう。

日本の皇室史上初めての民間からのお妃様ということで、よそからは計り知れない御苦労をなさいました美智子様は、皇室にお入りになって5年目になられた頃、「いつになったらこの暗いトンネルから抜け出すことができるのか」と、記者団に対してお話になっておられます。

現在の天皇皇后両陛下は、世界から「まるで聖職者のようだ」と、最も高い賛辞をもって讃えられます。
神々しく輝く現在のあのお美しいお姿の裏には、想像を絶するお辛い出来事が多々おありでしたことを拝察せずにはいられません。

自分と同じ人間は一人もおりません。また、自分がそうであるように、誰にでも弱い面がございます。だからこそ、人は互いに許し合い、見守り合い、助け合って生きてゆく。そうすることによって、互いの間に信頼関係が生まれ、尊敬の念が深まり、ゆるぎない本物の愛情というもので結ばれて参ります。
この夫婦としての理想の姿、人間としての見事な生き方を、昭和と平成の長きに渡り天皇陛下と美智子様が身をもってお示し続けてくださっておりますことに、しみじみと、日本に生きる幸せを想うのです。

今日は平成最後の日。
いつも長めの我がブログですが、今日はここからさらに書かせて頂きますこと、お許しくださいませ・・・

天皇皇后両陛下の御長女・黒田清子さんが紀宮様でいらした頃、
平成17年4月18日に行われた紀宮様36歳のお誕生日のご会見のお言葉をご紹介させて頂きたく存じます。

「両陛下のお姿から学んだことは、悲しみの折にもありました。事実に基づかない多くの批判にさらされ、平成5年の御誕辰(誕生日)の朝、皇后様は耐え難いお疲れと哀しみの中で倒れられ、言葉を失われました。当時のことは私にとり、まだ言葉でまとめられない思いがございますが、振り返ると、暗い井戸の中にいたようなあの日々のこと自体よりも、誰を責めることなくご自分の弱さを省みられながら、ひたすらに生きておられた皇后様のご様子が浮かび、胸が痛みます。私が日頃からとても強く感じているのは、皇后様の人に対する根本的な信頼感と、他者を理解しようと思うお心です。
 皇后様が経てこられた道にはたくさんの悲しみがあり、そうした多くは、誰に頼ることなくご自身で癒されるしかないものであったと思いますし、口にはされませんが、未だに癒えない傷みも持っておられるのではないかと感じることもあります。
 以前皇后様が、『人は一人ひとりの人生を生きているので、他人がそれを充分に理解したり、手助けしたりできない部分を芯に持って生活していると思う。・・・そうした事実をいつも心にとめて人にお会いするようにしています。誰もが弱い自分というものを恥ずかしく思いながら、それでも絶望しないで生きている。そうした姿をお互いに認め合いながら、懐かしみ合い、励まし合っていくことが出来れば…』とおっしゃった御言葉がよく心に浮かびます。
 沈黙の中で過去のすべてを受け入れてこられた皇后様の御心は、娘である私にもはかりがたく、一通りの言葉で表すべきものではないでしょう。でも、どのような人の傍らにあっても穏やかに暖かくおられる皇后様の御心の中に、この御言葉がいつも息づいていることを私は感じております(後略)」

(参考『天皇家の姫君たち』渡辺みどり著 文春文庫 『心豊かなお子さまに』松崎敏彌著 たちばな出版)

やはり、平成が終わりますことは寂しく存じます。ですが、平成天皇皇后両陛下は上皇・上皇后となられ、明日からもお健やかにあられ、平和を祈り続けてくださいますことを思いますと、私個人といたしましては、「今までありがとうございました」という過去形ではなく、「今までありがとう存じます。これからもどうぞお願い申し上げます」という、現在進行形の感謝の気持ちでおります。