2018.07.19 夏のお洒落
「本当のお洒落さんはね、お背中を背もたれに付けないものよ。
皺がつきますから。」
夏になると想い出す、亡き祖母の言葉です。
これは今から40年ほど前のこと。
当時は、夏のお洒落な外出着と言えば 100%麻のスーツやワンピースでしたから、すぐに皺がつきました。
そのような時代でしたから、
「背中の皺はみっともないもの。紳士淑女の気品にあらず」と言われていたのです。
電車の中で背をもたれかけると、
祖母は優しい笑顔で 私の背中にそっと自分の手のひらを当てて、
姿勢を正してくれました。
「ご覧なさい・・」と促すその視線の先には、
背筋をすっと伸ばした美しい御婦人や紳士の姿があり、
子供心に見惚れたものです。
年代を超えて人を魅了する美しさの裏には矜持があり、
その凛とした精神は真に美しい姿となって顕れ
夏の暑さまで忘れてくれる・・・。
まだクーラーなどなかった車内で
汗を忘れてお行儀を正した経験は、
生涯忘れ得ぬ宝物です。
大変な暑さが続いておりますが、
皆様どうぞお体をおいとい遊ばされまして
お健やかな夏をお過ごしくださいませ。